怪獣がやってくる
怪獣がやってきて僕の懐から38口径を
奪い取ってこういうんだ
「こういうものは季節が過ぎ去った後の轍みたいなものだ
誰にも思い出せない水のしたたりが君に見えるか?」
そんな言葉遊び、意味がないし関係がないよ、僕の38口径を返して、おだやかに健康でいてよ
怪獣は喉の奥から青緑の綺麗な鱗粉をまとった蝶を出してきて、少し迷ったけれど、もう薬の処方はいらないね、と微笑みかけた。僕にはその仕草が今までに出会ったどんなものよりも一等癇に障ったので、靴底に挟まった小石を指で削ぎ落としてから、ゆっくりと傘を怪獣の5つめの眼球に突き立て、ディベートした。明日の天気はおりからの低気圧で、うすぐもり。きっと傷が疼くだろう。