春らんまん、架空請求の嵐。
シードルを身体中に塗ったくって男は川へと割って入った。
後に何割か増して膨らんだ水死体となって花筏の吹き溜まりで見つかるその男はバチャバチャと汚い犬かきをしながら泡の浮力がどうの、とか、俺のチンポからアフロディテがどうの、とか言っていたが、やがて聞こえなくなったところで俺は缶コーヒーを買いにガードレールを跨いで道路に出て、財布から小銭を出そうとして掌が白く汚れているのに気がついた。
あいにく服は真っ黒に揃えていて一張羅だったし、ちょうどこの街はガードレール以外が全て真っ黒だったものだからなすりつけるわけにもいかず、俺はタクシーを拾って帰った。
家に帰ると朝のまま乱れた布団を見て舌打ちをして、テレビをつけると昔の特撮映画の再放送が、アスペクト比をいじられて妙に横長だったのが気に食わず、缶コーヒーを買い忘れていたことに気付いて、なんだか今日はボタンをすべて掛け違えているようだ、それもしたからゆっくり数え上げたうえで、間違えてら。そう思うが早いか、テレビを消して歯も磨かずに寝た。
川底から泡を伴って襤褸を着た詐欺師が溢れ出てくる夢を見た。