愛のなんたるかを知った手つきで手紙を書き終える前に寝てしまった子供らと同様に
ゴム毬みたいに弄ばれ、いまやビニール袋のクシャという音に怯え、黒ずんだ歯の一本すらも砕かれてしまった親父たちにも
優しくそそぐ雨があるはずだ。
火炎瓶めいた目くばせでアスファルトを敷いてみて、乾き切る前に蒔いたイチゴの種が…窓の外を往来していく
飛び散るためだけに置かれた耳元のグラスから産声を上げた僕らの絶望を
すり替える、インジケーターにあるのは「1972年 ○月×日」と。
わたしはピンとくる。どうやら本気でやつを抹殺する気のようだ。
「もう50年も経つのね…」知ったふうな口を叩く人が傍にあり、雨を吸った木蓮の蕾を握り潰す妄想から逃げおおせた、今まさにそんなところだ。