床に突っ伏している。心地の良い疲労感と満腹による強烈な眠気は、布団で寝た方が疲れが取れるはずという、正常な判断力の首根っこを掴んで屈服させる。ちょうどここで突っ伏して身動きの取れなくなっているわたしそっくりの状態だ。
寝入り端の私は何を考えているのだろう。今夜に関しては、目覚めた後にやらねばならない仕事の色々や家族の顔、音楽やコーヒーの事などは、何一つ頭をよぎりもせず、あるのはただ徹底的に眠りを追及しようという情熱だけであった。
眠ることだけを考えていられるのは幸福だな。しかし、明日また目覚めるという前提を予見した上での、儚い幸福なのだろうか。
将来、今際の際にあった時には、思い出や未練なんかはなんの役にも立たない。やはり同じような情熱で、はやく寝たい!という願いだけを携えて瞼を閉じることができたら、最高なんだろうな。
今はまだ、その時が訪れる事が恐ろしくてしょうがない。30そこそこの男にはまだ早い境地なんだろうな。
考えの劇的な転換の一つも訪れず、ある日ふと、今までとは全く異なる心境に陥る。歳をとる楽しみの一つである。