「G13型トラクター売りたし」。
服役囚マーカス・モンゴメリーのリクエストを受けて、ラジオの宗教番組『夕べの祈り』が賛美歌の13番を流すとき、ニューヨーク・タイムズ紙の広告欄の片隅にこの文言が記載されます。
ゴルゴ13とのコンタクトを図る手段としてあまりに有名なこの下りはいつでも、私の中でくすぶっている子供心を、再びあやして湧き立たせます。
秘密基地って、いくつになっても心躍る響きですね。
それが、普段気にも留めなかった街中の民家であればなおさら…。
自家焙煎コーヒー店『コーヒー ムテ』は、長いこと誰も住まず、打ちやっておかれた一軒の日本家屋――通称『突きあたりの平屋』にて、小さな小さな演奏会を開きます。
誰も住まない平屋に灯りがひっそりと燈る夕べ、夜気の訪れを阻むコーヒーの湯気と、鍋を囲む人々。
その向こうから聴こえてくる音楽に、じっと耳を傾けましょう。